重要なのは、マスクの配備義務を単なる“在庫確保”と捉えず、実際に作業員が適切に着用しているかという「運用」まで含めて管理対象とする視点です。マスクの種類には、有機溶剤対策に強い吸収缶付き防毒マスクや、塗装作業用の粉じん対策ができる防じんマスク、不織布の簡易使い捨てマスクなどがあり、それぞれ作業内容に応じた適合性を判断する必要があります。
加えて、使用履歴や点検結果を記録に残すことも義務的な管理業務の一環です。厚生労働省のガイドラインでは、マスクの交換タイミング、装着状態のチェック履歴、フィルターのローテーション情報などを、作業日報または安全衛生記録簿に記載することを推奨しています。
以下のような記録項目の整備が必要です。
記録項目 |
内容例 |
使用者氏名 |
配布対象の作業員名 |
使用マスクの型式 |
3M 6000シリーズ・興研 BLK型など |
使用開始日 |
各作業日の記録 |
フィルター交換日 |
吸気抵抗・においの発生などのトリガー記録 |
点検者 |
点検を実施した安全衛生担当者 |
また、吸収缶の交換管理においては、使用時間の累積に応じた計画的交換を行うことが必須です。有機溶剤にさらされる作業では、標準で20時間を超える使用は推奨されておらず、記録がないまま使用し続けることは重大な健康被害に直結するリスクがあります。
さらに、備品の破損や欠品が発生した際には、即座にバックアップ用品への切り替えを行える体制を整えておくことが理想です。業者との契約により、一定量の予備在庫を確保し、発送・届け日の目安も確認しておきましょう。注文日から翌日納品可能な「当日出荷」対応のサプライヤーとの連携が、現場の安全を左右します。
結果として、マスク管理の実効性を確保するには、単なる配備だけでなく、記録、点検、交換、教育の各フェーズでの継続的なPDCA運用が求められます。マスクは使い捨てできる消耗品であっても、現場の命を守る「安全管理資材」であるという視点を全責任者が共有すべきです。
教育には座学だけでなく、実地訓練も取り入れるべきです。たとえば、「吸収缶の取り付け方法」「装着時のフィット感チェック」「ひもやヘッドバンドの調整手順」など、具体的な操作手順を全員に実習させることで、誤使用のリスクを大幅に軽減できます。
さらに、教育内容を記録に残す「教育実施記録表」の作成と保管が求められます。また、教育内容を反映したチェックリストの導入も効果的です。毎日の始業時点検に「マスクの状態」「吸収缶の交換日」などを含め、実際の使用状況を定期的にモニタリングすることで、未着用や装着ミスの早期発見につながります。