塗装工事において、塗料の飛散対策がどれほど重要かをご存じでしょうか。飛散防止は、近隣への配慮や施工品質を左右するだけでなく、後々のトラブルや損害賠償リスクを避けるための要とも言える部分です。にもかかわらず、見積書にその内容がしっかりと記載されていない業者も存在します。
ここでは、業者選定時にチェックすべき飛散防止関連の見積書項目について解説します。
まず注目したいのが、養生費の記載です。養生とは、塗料が不要な箇所に付着しないよう保護する作業であり、工事の品質や周囲への配慮に直結します。養生に関する記載が一式となっているだけでは、その中に飛散防止用ネットやフィルム、ブルーシートなどの具体的な資材が含まれているか判別できません。したがって、資材の種類や養生範囲が明記されているかを必ず確認してください。詳細に記載された見積書は、それだけで信頼性を高める証でもあります。
次に確認すべきなのは、飛散防止ネットの使用有無です。足場の外側に設置される飛散防止ネットは、塗料が隣家や道路に飛び出すのを防ぐ非常に重要な資材です。中でも防炎性能や高密度メッシュなど、安全性や耐久性に配慮されたネットが記載されていれば、なお良しです。特に住宅密集地では、飛散リスクが高まるため、こうしたネットの有無は業者の配慮レベルを測る一つの目安になります。
そして見落としてはならないのが、飛散保険の加入状況です。万が一、塗料が隣接する住宅や車両に飛散してしまった場合、被害を補償できる体制が整っているかどうかは非常に大切です。優良業者は、見積書または契約書類の中に対物損害補償保険生産物賠償責任保険などの補償内容を記載し、工事中の万一に備えています。口頭説明だけで済まされている場合は、後から証明が難しくなることもあるため、文書での確認が必要です。
このほか、飛散防止対策に関する見積書チェック項目を表にまとめました。
チェック項目名 |
内容の確認ポイント |
見積書で確認できる記載例 |
養生費の詳細 |
養生の範囲や使う資材の種類が明記されているか |
養生費:開口部透明フィルム、床面ブルーシート等 |
飛散防止ネットの使用有無 |
高密度メッシュや防炎仕様の記載があるか |
足場外周:防炎飛散防止ネット設置 |
使用資材の品質表記 |
メーカー名は記載不要だが、防炎性・透過性などの特徴が明記されているか |
飛散防止ネット(防炎仕様、高密度) |
飛散保険の加入内容 |
対物補償や施工中損害への対応が含まれているか |
生産物賠償責任保険加入済、対物補償あり |
近隣配慮や周知活動の有無 |
工事前の挨拶回りや注意喚起が想定されているか |
近隣住民への事前通知、挨拶実施予定 |
その他安全管理体制 |
日々の安全確認や作業中の監督体制の記載があるか |
作業管理者による巡回、安全会議実施 |
見積書は、業者の施工姿勢と安全意識を映し出す鏡です。飛散防止という観点からも、その内容を細かく読み取り、信頼できる業者を見極めることが大切です。項目の記載有無だけでなく、どこまで具体的か、どこまで配慮が行き届いているかに注目してください。細部まで行き届いた内容は、工事完了後の満足度にも直結します。安易な一式記載や曖昧な表現に惑わされず、自身の目でしっかりと確認することが、後悔しない業者選びへの第一歩です。