事前調査と見積り作成の流れ
塗装工事の第一歩は、現地調査と正確な見積り作成にあります。この段階で工事全体の品質が左右されるため、軽視してはなりません。具体的には、建物の外壁や屋根の劣化状態、ひび割れの有無、下地の傷み具合、塗膜の剥がれやカビ・苔の発生状況などを細かく点検します。また、周囲の建物との距離、足場の設置スペース、日照や風通しなども確認事項に含まれます。
調査結果を基に、塗装の必要性や施工範囲、使用すべき塗料の種類やグレードを選定し、それに応じて費用が算出されます。よくある不安点として「見積りに含まれる項目が曖昧で、あとから追加費用を請求されるのではないか」という懸念がありますが、信頼できる業者であれば、以下のような明確な内訳を提示してくれます。
見積書の基本構成の一例
項目 |
内容 |
単価または金額 |
備考 |
足場設置費用 |
組立・解体・搬入 |
700円/㎡ |
高所作業必須 |
高圧洗浄費用 |
外壁・屋根の洗浄 |
300円/㎡ |
汚れ除去と密着力向上 |
養生作業費 |
サッシ・窓など保護 |
200円/㎡ |
飛散防止 |
下塗り |
下地強化・吸収防止 |
500円/㎡ |
シーラー等使用 |
中塗り |
着色・厚み確保 |
800円/㎡ |
メイン塗料 |
上塗り |
耐久性・美観仕上げ |
800円/㎡ |
色ムラ調整含む |
付帯部塗装 |
雨樋・破風など |
2,000円/箇所 |
美観統一のため必須 |
合計金額 |
上記の合算 |
約80万円(30坪) |
消費税込・目安 |
見積り段階で確認すべきチェックポイント
- 工事項目が具体的に記載されているか
- 塗料名やメーカーが明示されているか(例:日本ペイント・関西ペイント)
- 保証年数やアフターサービスが含まれているか
- 工期・開始予定日・雨天時対応の有無
- 見積書の有効期限
「塗装会社によってなぜここまで価格差があるのか」と疑問に思う方もいますが、使用塗料のグレード、足場の種類、施工体制(外注か自社職人か)などによって大きく異なります。優良業者は、こうした価格の違いを丁寧に説明し、過去の施工事例や顧客レビューも提示してくれるため、見積り時には必ず質問する姿勢が重要です。
施工前の調査が甘いと、後からの補修や追加費用が発生するリスクが高まります。逆にこの段階で詳細な確認と調整が行われれば、完成後の仕上がりや持続性に大きな差が生まれます。信頼できる業者選びの第一歩として、見積書の透明性は最重要事項のひとつといえます。
足場組立から養生・高圧洗浄
塗装工事において最初に実施されるのが足場の組立です。足場は、職人の安全確保だけでなく、作業の正確さ・塗料の均一な塗布にも直結する重要な工程です。足場が不安定だと、作業者が手を伸ばして塗る場面が増え、結果的に塗膜の厚みがバラつき、劣化が早まる原因となります。使用される足場には単管足場、ビケ足場、くさび式足場などがあり、建物の形状や敷地状況により最適なものを選定します。
次に行うのが「養生作業」です。養生とは、塗装の際に塗料が飛び散ったり、意図しない部分に付着したりするのを防ぐために、サッシ・玄関ドア・植栽・車などをビニールシートや専用シートで覆う作業です。これを怠ると、施主から「車に塗料が飛んだ」「サッシがべたついている」といったクレームが発生するため、非常に重要な工程とされています。
養生完了後、いよいよ「高圧洗浄」に入ります。これは外壁や屋根の表面に付着したコケ・カビ・汚れ・旧塗膜などを専用の高圧洗浄機で徹底的に洗い流す工程です。洗浄が不十分だと塗料の密着力が落ち、早期剥離や気泡発生のリスクが高まります。洗浄時には以下のようなチェック項目が存在します。
高圧洗浄時のチェックポイント
- 外壁の素材に合わせた水圧調整ができているか(例:サイディングは中圧推奨)
- 目地やシーリング部分に損傷を与えていないか
- 洗浄水の飛散対策が講じられているか
- 屋根や雨樋に詰まりが発生していないか
高圧洗浄は、塗装全体の仕上がりや耐久性を左右する下地処理の一環として非常に重要です。特に外壁塗装の場合、下地に汚れや劣化層が残っていると、塗料が乗らずに早期剥がれや劣化を引き起こします。
以下に、足場〜洗浄までの工程と平均費用感をまとめた表を示します。
工程 |
内容 |
作業時間 |
足場組立 |
作業足場の設置 |
半日〜1日 |
養生 |
塗料の飛散防止 |
半日程度 |
高圧洗浄 |
外壁・屋根の洗浄 |
1日 |
さらに、作業中は近隣への配慮も欠かせません。工事開始前に「塗装工事 挨拶」としてチラシ配布や手土産持参などの挨拶回りを行う業者もあり、これがトラブル防止や印象向上につながります。特に、外壁塗装時の「飛び散り」や「騒音」に対する配慮が行き届いているかどうかは、業者選定の重要なポイントでもあります。
このように、塗装の本工程に入る前段階にも多くの専門知識と技術が必要とされるため、「工程が雑な業者」は避け、「下地処理を重視する姿勢のある会社」を選ぶことが、長く美しい外観を保つためのカギとなります。
塗料の選定と塗装3工程(下塗り・中塗り・上塗り)の役割
塗装工事の核心は、何と言っても「塗料の選定」と「3度塗り工程」にあります。この工程がしっかり行われるか否かで、外壁塗装の耐久性・防水性・断熱性・美観に大きな差が生じます。特に、下塗り・中塗り・上塗りという3層の重ね塗りは、それぞれに異なる役割があり、塗料の性能を最大限に引き出すためには、順を追って丁寧に施工する必要があります。
まず、塗料選びの前提として、外壁の素材・既存塗膜・劣化状況・環境要因(海沿い・寒冷地など)を見極めることが重要です。下記は代表的な塗料の種類と特徴を比較したものです。
塗料の種類 |
耐用年数 |
特徴 |
アクリル塗料 |
5〜7年 |
安価で発色が良いが耐久性は低い |
ウレタン塗料 |
7〜10年 |
柔軟性があり密着性に優れる |
シリコン塗料 |
10〜15年 |
現在主流。コスパと耐候性のバランスが良い |
フッ素塗料 |
15〜20年 |
高耐候・高耐久だが価格は高め |
無機塗料 |
20年以上 |
不燃・超耐久。遮熱や防カビ性も強い |
塗料を選ぶ際のポイントは、「単価」だけでなく「住まいの立地環境・ライフプラン・将来のメンテナンス計画」を総合的に判断することです。
続いて、実際の塗装工程における3度塗りについて詳しく解説します。
1 )下塗り(プライマー・シーラー)
- 下地と塗料の密着性を高め、塗料の吸い込みを抑える役割を持ちます。塗装後の剥がれや浮きを防ぐうえで最も重要な工程ともいわれています。
- 使用塗料例:エポキシ系プライマー、水性ミラクシーラーEPO など
- 注意点:素地の吸水率や傷み具合に応じて「フィラー」などで平滑化処理を追加することもあります。
2 )中塗り
- メインとなる塗料の1回目。上塗りとの中間層として、塗膜の厚みを形成し、耐久性と色ムラ防止の基礎を作ります。
- 使用塗料は上塗りと同一が基本。
- 注意点:ここで使用する塗料量・乾燥時間が不足すると、上塗りがうまく乗らず、見た目や性能に影響します。
3 )上塗り
- 塗装の最終仕上げ。美観・耐候性・撥水性など最も目に見える部分であり、表面の塗膜保護機能も担います。
- 色ムラが出やすい工程なので、経験ある職人による丁寧な作業が求められます。
- 乾燥時間をしっかり取り、塗膜厚も確保することで塗料本来の性能が発揮されます。
各工程は「乾燥時間を守る」ことも極めて重要です。塗料には適切な「重ね塗り乾燥時間(インターバル)」が設定されており、これを守らないと塗膜内部に水分が閉じ込められ、将来的な膨れ・剥離の原因となります。